ターセム・シン監督が目指すもの


先週金曜に公開となりました「セルフレス 覚醒した記憶」を観てきました。

ターセム監督といえば故石岡瑛子さんを衣装担当に迎えきらびやかで目をひく作品作りで知られていますが、今回の「セルフレス」、トレーラーを見る限り数十年後の未来を描くSFスリラーでターセム監督らしくない作品のようにも見えました。

石岡さんがお亡くなりになられた影響もある、という記事も見ましたが、実際「セルフレス」を観ると、石岡さんの豪華絢爛な衣装はないけれど、単なる一般的なのスリラーではないことがわかりましたし、ターセム監督作品に流れる空気と美しさも健在でした。

物語もサー・ベン・キングズレーの演技も素晴らしかったです。

特に帰宅後の鍵の投げ方。ライアン・レイノルズの役柄にも引き継がれるのですが(トレーラーをご覧になられていればネタバレにはならないのでご心配なく。)、2人の鍵の投げ方は完ぺきなアートです。

物語は違えど、「The fall 落下の王国」を思わせるような場面や映像も多々ありました。

トレーラーには出てきませんが、ニューオリンズのシーンは特にそう感じました。

観終わってから「セルフレス」に関するターセム監督のインタビューをあさり、なるほど、と思えるもがありましたので日本語に訳しました。

ターセム監督の作品がお好きなら、「セルフレス」がターセムらしくない作風に見えるからと観に行かないのは本当にもったいないです。以下のインタビューを読んでぜひ、観に行っていただけたらと思います。

 

 

 

 

本作は長編映画の5作目にあたる作品ですよね。

ザ・セル、The Fall 落下の王国、インモータルズ、白雪姫と鏡の女王、そして本作。

 

 

ターセム・シン:そうだね。

 

 

この5作にターセム・シン作品として共通する特徴などはありますか?

 

 

僕の目を通したものという事と、”映画的”という事以外は特にないとは思う。

僕は元々、1、2作くらい映像作品を撮りたかっただけだったんだ。

でも気が付くと3作目、そして4作目も控えていた。

振り向くと僕のもとに(依頼に)届くのはファンタジー大作ばかりになっていた。

僕が目指すのはポランスキーのようにスリラーでもコメディでも、舞台でも彼のDNAが感じられるそんな作品だ。

でも僕のDNAは特定のジャンルにしか向かっていない状態だったから、それを打ち破りたい、と僕は事務所に言ったんだ。

今やらなかったら5年後、もしまだこの仕事を続けていたら、僕の元にくるのはティム・バートンが断った作品だけになってしまうと。

 

 

そんなこと絶対ないですよ

 

 

絶対にそうさ。

 

 

 

では意図的に本作を選ばれた、というわけですね。

 

 

そう。継続してきた作品、予算の大きい作品などは監督したけれど、“The Fall 落下の王国”の直後から違うジャンルの作品を撮りたいと僕は言ってきた。

映像に重きを置きすぎない、しっかりとしたスリラーを撮りたかった。

 

 

しっかりとしたスリラーとおっしゃいましたが、例えばテクノロジーや企業がほかの企業から技術を奪おうとするような別のアングルからのアプローチも可能だったと思います。しかしこの作品には家族の大きな心の物語が根底にありますね。家族という要素は重要でしたか?

 

 

実はそこが一番興味をひいた部分なんだ。

科学的な方向にもっていくこともできたけれど、

心の旅だったり、個人の物語が現代の臓器移植をする人々の中にもあると思うんだ。

もし、科学的な方向にアプローチをするとしたらもっとファンタジーの要素が強くなってしまうからそれも避けたかった。

___

 

 

 

 

ほかのインタビューではこうもおっしゃっていました。

 

当面は幻想的な作品に戻る前にそうでない作品を撮りたいと思ってる。

「ファンタジーの脚本だからあいつにやらせればいい」と思われたくないんだ。

 

僕の作品らしくない、という人もいるけど、そういう人には僕はこう言う。

「僕の監督した広告を見てないんじゃないかな。そこら中にあるよ」と。

幻想的な作品はなしで、少し普通の作品を撮りたいと思っている。

 —

訳注:

*本作のストーリーの展開など、先が読める展開だ、というような内容の感想もいくつかツイッターでは見かけましたが、それを含めて”映画的”とターセム監督はおっしゃっているのでは、と感じました。この物語がフォーカスしてるのはリアリティを深めるたりする点ではないのですよね。

 ところで、タイトルの selfless セルフレスは無私の、無欲の、という意味ですが、

SELF/LESS のように間が分けられてると別の解釈もでき、自分が/無い という風にも理解してできます。

その他のインタビューからのメモ切れ端。

*経営学の修士号のためにハーバードに行くことになっていたターセム・シン監督。ターセム監督は渡米前にアメリカ映画学校ガイドという本に出会い、親の反対を押し切り、1984年、世界中の熱い気持ちを胸に大きなバッグ一つ持ってアメリカにやってきたそうです。

 

*入れ替え装置はモンティパイソンの出来上がったらチーン!となるような物でなければMRIみたいのでOK、と担当者に伝えたそう。(笑)

*本作が決まる前にこの後、2作続けて映像中心の作品を撮ることが決まっていたのでどうしてもスリラーを撮りたかったとも。

*ベン・キングズレー演じるダミアンの住むマンハッタンのアパートメントはエンド・クレジットで名前が挙がっていたドナルド・トランプ氏のものだそうです。Source

ちょっとデザインが古っぽく、スタイリッシュとも言えないけれどとても豪華な内装だったので、納得。元々は他の億万長者のアパートメントを借りる予定だったけれど、許可が下りなかったのだとか。

映画をご覧になられた方なら以下のリンクのインテリア、見覚えがあると思います。

Inside Donald and Melania Trump’s Manhattan Apartment Mansion

 

 

 https://twitter.com/peppers_attic/status/774032887427411968
それにしても、あのお金で最後のあの時間を買ったのだ考えると、 その価値があったと感じますね😭 

ザ フォール 落下の王国 リー ペイス、ターセム シン監督インタビュー訳 The Fall

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リー ペイス特集2 🙂
リーペイスのインタビューだけでなく、このとても素晴らしい作品を作り上げたターセム監督のインタビューも気に入ったところをメインにご紹介します。

ターセム監督のインタビュー

((ブルー シティはどこにあるのですか?))

ターセム監督: インドのジョードプールという町。撮影に入る2ヶ月前にジョードプールに行き、誰にでも壁を塗る好きな色のペンキをあげる、と言ったんだ。実はジョードプールは町の決まりでブルー以外では家を塗装してはいけない町のなので、みんなブルーをもらっていった。なので、色あせて薄いブルーだった家々は作品の中では普段よりもずっと青が濃くなっているんだ。

((撮影中にロイ役のリー ペイスが実は脚が不自由ではない、という事を知らされなかったクルー達は撮影後に知らされた時、怒っていたと聞きました。))

僕はリーは脚が実際に不自由で、彼がロイを演じ、山賊役はルーマニア人の別の役者が演じる、とクルーに伝えていた。
15〜17年一緒に仕事をしてきたクルー達は”自分達を信じてくれなかったのか”、と憤慨したが、信じていない、とかそういうものではなくて、
実際にアレクサンドリアを演じるカティンカにロイは脚が不自由だと信じさせたかったからなんだ。
クルー達は撮影が始まり2,3週間も慣れ親しんでくるとつい ふざけあってベッドにジャンプしたり、ハンディキャップがネタのジョークを言ってしまったりすることがあり得るだろう。でも、実際に脚が不自由だと信じていたら、そういう事はないからね。

リー ペイスのインタビュー

((脚が不自由だとカティンカとクルー達に信じ込ませたそうですが))

リー ペイス:これはターセムのアイデアでね。撮影初日に僕は車椅子では入り、自分をロイだと紹介するように言われたんだ。
おかげでセットにはいたわりをもった空気が流れていたよ。

カティンカは撮影中、僕の事をよく気にかけてくれて、お昼の時にデザートを立ち上がって取りに行けない僕のために持ってきてくれたりしたよ。
僕達の間に信頼を築きあげてくれた。
でも、実は歩けた、と知らされた時、クルー達はあまりいい気分ではなかったようだね。
カティンカは僕が歩けると最後にわかった時、彼女の愛が僕の脚を癒した、と思ったんだ。本当に彼女はそう信じていたよ。

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((彼女の演技が変わった時があったそうですが。))

カティンカがカメラを意識しないようにカーテンの後ろから撮影していたんだ。
僕とカティンカだけのプライベートな空間になったから、彼女はターセムの悪口を言ったりして、それを聞いてるクルー達の笑い声が隣の部屋から聞こえたりして、彼女は”みんな何にわかってるのかな”、と言うくらい撮影されている事を忘れていた。

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足の指を触るやりとりの時は彼女は怒られるんじゃないか、と不安になったりしてたね。

ある時、彼女が自分が撮影されていて、可愛いんだ、と意識した時に、彼女の演技がお姫様のようなひどいものになってしまった事があったんだ。
僕は彼女に、”君の愛する人が死んでしまいそうなんだよ。君は本気でなんとかしようとしなければ。彼の命を救おうとしなければいけないんだよ”、と伝えたんだ。ラストの”I don’t want you to die.” (死んじゃいや!)というシーンでは彼女は本当に良い演技ができていたと思うよ。素晴らしい女の子だ。

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ところで、日本語のウィキなどのあらすじには”ロイは半身不随となり…”、とありましたが、英語版ウィキでは”半身不随の可能性があり”…中略…”ラストのアレキサンドリアの語りでロイが回復し、スタントに戻り活躍している、とわかる” とありました。

他にも落下の王国に関するインタビューで良かったものがあったので、また近いうちに追加しておきます。

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