人生の勝負に出る後押し。『マン・アップ!恋のロンドン狂騒曲』

  
『マン・アップ~恋のロンドン狂騒曲』観ました。

ロマンティックコメディは大好きですが、この作品、1番好きなロマコメ、と言える映画かもしれません。

普段は映画のあらすじを書きませんが、冒頭の出会いがホント素敵なのでその部分だけをまず。

34歳独身。4年間彼氏なし。映画が好きでFacebookはやってない。もちろん恋人は欲しいし結婚したら子供も欲しい。でも相手探しが難しいなら、1人でベッドでお酒飲んでポテトチップス食べながら『羊たちの沈黙』を楽しんでる方が楽。姉の励ましとそんな姉の気持ちを立てるためもあり、重い腰をあげて自分の人生に積極的にならなければ、とは思っている主人公のナンシー。

40歳のマーケティングマネージャー。本当は画家になりたい。妻の浮気の末、離婚の手続きを迫られている。繊細でそんな現実を受け入れられないながらも、前に進んでいかなければ、とがんばっている、ペグさん言うところの「傷ついた兵士のような」ジャック

友人の紹介で会ったことのない24歳のロンドンのビジネス街シティで働くジェシカと会うことになったジャックはある出来事のせいでナンシーをジェシカだと勘違いをして、声をかけてしまいます。

ナンシーが人違いだ、と言おうとしている中、しゃべり続けるジャックが使った『羊たちの沈黙』からの台詞「交換条件だよ、クラリス」。前日に部屋で『羊たちの沈黙』を観ながら彼女が暗唱してた台詞です。

その瞬間、ナンシーに ”この人が運命の人なのかもなのかもしれない” という表情が表れます。

ここがとてもいいんですよね。

だって、映画好きというかオタクのように映画が大好きな私達(これを読んでくださってるみなさんの事ですよ 🙂 )には好きな映画の台詞を引用する男性が現れた(しかもサイモン・ペッグ)ナンシーの気持ちが痛いほどわかるじゃないですか。

 

そのあとのお話は映画をご覧になってのお楽しみですが、ペグさんが「すごく楽しい心の変化を扱った映画。この映画を観終わった時、笑顔じゃなかったら、ちょっと問題ありなんじゃないかな」とおっしゃる映画ですので、ニコニコの笑顔をもたらしてくれること請け合いです。:D

https://twitter.com/peppers_attic/status/690429875245572096 

ネタバレにならないちょっとした台詞の実際の楽しい意味をメモに残しておきます。

これからご覧になるかたも読んでおけばさらに楽しめると思います。

すでに御覧になられた方は補足として。

*バービー人形のくだり

ナンシー:バービーはビーチ用バギーも馬もサロンも持ってるわ。

姉:彼氏もね。

ナンシー:まだあの男と付き合ってるのかしら、彼女。あんな作り笑いの男なのに。

ショーン:(字幕)今も同じシャンプー?

(英語)今もパンテーンPRO-Vを使ってるんだね。

ショーン:(字幕)座標も把握している。

(英語)google mapの座標も完璧に知ってる。

 

 

ナンシーが自分の手帳に書いていたスローガンもメモしたので、

Mantras

→Put yourself out there (冒険する)

→Take chances (勝負する)

→Get stronger Thighs (脚をきたえる)

→Be more devient (自由人になる)

→Learn French(フランス語を勉強する)

→COOK MORE(料理をする)

→Understand Israel / Palestine issues(中東問題を理解する)

→Engage with life (もっと人生を楽しむ)

 

素敵な台詞もいっぱいの作品です。

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ここからペグさんの撮影裏話とショーンを演じたロリー・キニアさんのお話をご紹介します。

まずは007シリーズのタナーさんでお馴染みキニアさん。

ショーンという役柄に関しても驚きの深い考察をされていて、思わず目がウルウルしてしまいました。

このインタビューを見たら、ショーンへの見方が変わります。

ネタバレもあるので、御覧になる予定の方、ネタバレを避けたい方はご注意願います。

 

 

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ロリー・キニア:「『マン・アップ』は人生の勝負に出る事についての映画だね。

望んでいるものがあって、どうやったらそれを手に入れられるかがわからないもの。

それを手に入れるためには怖いけれど、今の自分の快適な普段の世界を捨てて、飛び出さなければいけないという話なんだ。

”もしかしたらこの人は自分の人生を180度変えてくれる人なのかもしれない”、と言える勇気を持つこととかね。

中略

監督は僕に、思いっきりやっちゃっていいと言ってくれたので僕もそのように演技をしたよ。でもやりすぎな時はちゃんと止めてくれた。

ショーンがナンシーに”お願い”をする場面では、わざと気持ち悪く演技しないようにした。

彼への共感を持ってもらえるように、と。

それから彼の純粋さも表したかった。

15歳の不器用なティーンエイジャーから成長できずにいる彼をね。

ショーンは学校の就職相談員にボーリング場で働く事を予想され、

彼は今、実際にボーリング場で働いていることを嬉しく思い、楽しんでいるんだ。

9、10年働いている一番勤務年数の長いスタッフなんだろうと思う。

マネージャーにはなれなかったけれど、別に彼はそんな責任重大な役職は望んではいないから平気でね。

友達はボーリング場の仲間で、それが彼の世界。

仲間はそんなにたくさん飲みに行こうとか彼を誘わないだろうけど、仕事も忙しいからそれも平気。

そんな子供の心のまま成長できず大人になったような彼の前にずっと思い続けていた夢の女性が現れるんだ。

自分が結婚し、子供を持ち、共に暮らす相手として想像し続けてきた女性。

お互いに恋に落ち、初めての経験をしたと想像してきた女性がね。

中略

僕のシーンはほとんどがレイクとサイモンと一緒のシーンだった。

かわいそうにレイクはほぼ4日間、パンツ一丁の僕と撮影をしたんだ。

彼女はとてもプロフェッショナルに、”英国流”とも言えるストイックさをもって演技をしてくれたよ。

コミカルな演技もできる彼女と楽しく和やかに演技をし、やりすぎた時は監督に「脚本を覚えようか」、と注意されたり、で、ちゃんと脚本通りやったあとはまたちょっとコミカルに演技したりしたんだ。

監督は自分の求めている事ははっきりしていながら、とても柔軟で新しいこと試すのも好きだったので、僕らがいろいろな幅の演技をしても、最高の組み合せを作品全体に彼が選んでくれるのはわかっていたよ。

次にペグさんの撮影裏話。

(この作品を作って学んだことは?) 

使われている駅は貸し切る事ができないから、人の少ない土日の深夜にエキストラを連れて撮影しなければならない事かな。 

ミッションインポッシブルではそんな事しなかったからね。本物の駅は使わず、駅のセットを作ったんだ。マン アップではそんな予算はなかったから、ウォータールー駅で撮影するしかかなったんだ。

  
 他にはサウスバンクのスケートボーダー達は言葉でお願いしても静かにはしてくれないから、ビールを賄賂に静かにしてもらう、って事を学んだよ。

僕も今もだけど、昔もスケーターだったら彼らに対し親近感はあった。彼らがオーリーとかの技でスケボーをガンガン打ちつける音は撮影の邪魔になっていても、心では彼らを応援してたよ。撮影なんか気にしないでガンガンいけ、とね。注意する側の”大人”でいたのは嫌だったね。

  

しあわせのきじゅん。サイモン・ペッグ

  

 Gif

ペグさんのインタビューの抜粋日本語訳です。

私の好きなテーマ(幸せについて)についてお話しされてたので、訳してみました。

 

元の記事はペグさんがお住まいのハートフォドシャーのタウンサイトのようはウェブサイトです。

一番下にリンク貼ってます。

 

 

(前略)

笑いながら彼は、説明してくれた。

『誰よりも僕が驚いてるよ。だってこれは僕のキャリアプラン通りだったわけじゃないんだから。

もともとキャリアプランなんて立ててなかったしね。

いろいろな事が起こり、流れに身を任せている。

そうするとまた他の事が起こって、また僕は流れに身を任せる。

ふと立ち止まると、”どうやってここに?”と思うような場所に自分がいる事に気づくんだ。』

 

ペッグは自分がトム・クルーズと同じ成層圏(訳注:つまり世界)に所属しているとは考えてはいない。

 

『彼はスターで僕は違う。でもスターになりたいとも思ってもないよ。』

有名であるための名声は彼の興味の対象にはならないようだ。

『多くの人が名声を得ることがゴールだと考えているけれど、名声はゴールであるべきものではないんだ。名声は何かの副産物でしかない。何かを成し遂げた結果であり、対応していかなければならないものでもある。』

彼は名声のもたらす影響を

『重すぎる例えかもしれないけど、』

としながらも

『原子力発電所で働く人の受ける放射線の影響のようなもの。』

と説明する。

『それは、必ずしも良いものとは限らないけど、闘っていかなければならないものなんだ。

とは言え、名声は放射能と違って、ものすごくありがたいものでもあるよ。

時に店などではとても特別に対応してもらえたり、ただで何かもらえたり、理由なしに親切にしてもらえる。でも、それは周りの人々をとても変えてしまうから、自由にパブとかに行けなくなってしまったりもする。

いいことも悪いこともあるよね。人が考えるほど素晴らしいものではないんだ。

そんなのセレブの高慢な戯言だと思わないでほしい。

僕は自分の仕事をとても愛している。

でも、自分の生活を持つ事もとても重要な事なんだ。

もし生活がもてないのなら、仕事が人生になってしまうだろう。

僕は仕事は心から好きだ。この仕事ができる事を幸運に思うし、とても楽しんでしている。

人がある仕事から次の仕事へ動く時、ハッピーだと感じられるなら、その人は成功者だと言えるね。

もし、仕事ばかりで、ハッピーな気分になれないのなら、その人は成功者とは言えない。

成功は幸せがあってこそ作り上げられるものなんだ。

地球一リッチでも死にたいと思っている人もいれば、

ロバの糞の掃除という仕事をしてたって、好きだと思ってしてるならば、ハッピーなわけだから。』

 

ペッグが言うには今、彼にとっての成功は、

『自分のの持つ特権や誰と仕事ができるか、ではなく、

どれだけ自分が幸せか』

で測れるそうだ。

この哲学によって、彼はロンドンからハートフォードシャーの田舎町へ音楽関連の仕事をする妻のモーリーンと娘のマチルダと移り住んだわけだ。

ハリウッドではなく、ここが彼の世界の中心になったのだ。

『僕にとって一番重要なのは自分の家庭生活。

落ち着いていて、帰るのが楽しみな場所。

僕は古臭いかもしれない。

でも結婚して子供がいるということをとても嬉しく思うし、

パパでいる事もそれに伴うすべての事も大好きなんだ。』

 

マチルダは父親にそっくりらしく、ペッグはそれを心から嬉しく思っているらしい。

 

『たぶん、親の醍醐味のひとつは、自分の子の学芸会の劇を見れることだと思う。』

彼は歯を見せながら笑った。

『ティリー(マチルダ)はキリストの降誕劇でマリア様を演じたんだ。

上手く言い表せないけれど、頭に紐を巻き、彼女はマリア様そのものだった。

僕はとても誇りに思った。

赤ちゃんイエスの頭を音楽に合わせてステージにぶちつけまくってたけど、僕は誇らしかった。

さすが僕の娘だ、ってね。』

 

もし、急にトム・クルーズが彼にメールをしてこなくなったとしても、ハリウッドが彼から離れていったとしても、ペッグは彼の運命にこの上ない幸せを感じられるのだろう。

 

『もちろんさ。

もちろん、そうならない事を願うけど、この業界ではいくらでもあり得る事だよ。

僕は本当に恵まれている。僕の仕事は仕事でなければ、趣味なんだもの。

僕はね、僕の関わる映画を人々が喜んで観てくれているなら最高だけどね、

もし、そうでない日が来たとしても、僕はアマチュアの舞台に戻るまでさ。』

 

高貴にも思える発言だ。

この国のアマチュア劇団にはぬか喜びだろう。なぜならハリウッドにはペッグがまだ必要だからだ。

以上

Source:http://www.hertfordshirelife.co.uk/people/celebrity-interviews/nerd_dad_superstar_1_4171779

 

訳注:イギリスで言うアマチュア劇団というのは、プロと収益の差がある他に、素人の劇団、という意味でなく俳優組合に所属していない役者などが多い劇団をさすのだと思います。

アメリカの俳優組合ですが、組合に所属していないと映画には出演させてもらえないので、ちょい役に出させてもらうためになけなしのお金を払って加入した、というようなエピソードをJ.K.シモンズが以前インタビューで語っていました。

 

 

 

 

 

 

サイモン・ペッグと娘さんとレイア姫

  

Photo source

エンパイア誌にペグさんが寄稿したエッセイ。
少しだけ抜粋し、訳しました。

Long time ago, just now


むかしむかし、そしていま。

サイモン・ペッグ

僕が初めて買ったスターウォーズのおもちゃはR2-D2だった。
頭が動く愛らしいドロイド。音もなった。
今、僕は本物のR2-D2に腕を回した自分の5歳の娘の写真を撮っている。

次に娘は素晴らしいチームが陰で遠隔操作する新しいドロイド、BB-8のそばにひざをついた。
完全に魅了され、丸っこい頭をなで、うなずいたり、子犬のように動くBB-8に話しかける娘。
ミレニアムファルコンに向かう予定だった僕は娘に BB-8はお仕事があるから行かせてあげようね、と促す。
娘は「じゃあ、あと1回ハグだけさせて」と言った。
その瞬間僕はこのスターウォーズの世界の新入りが37年前のR2と同じようにすごい現象を巻き起こすであろうと感じた。
あの時僕が、最高の99ペンスの使い方をして買ったR2と同じように。

中略

今、僕はパインウッドスタジオの中に作られたレジスタンスの基地の中を
キャリー・フィッシャーと腕を組み、歩いている。
子供のころ、寝る前にいつも彼女の写真にキスをしていた。
もう一度この(スターウォーズの)世界に戻ることを不思議に思わないか、と聞いた。
彼女は僕の質問に一笑する。
彼女は最高に強くてかっこよくて、ユーモアがある。
僕は彼女をハグし、恥ずかしげもなく彼女にI love youと伝えた。
彼女は僕の手をつかみ、結婚指輪に目をやり、僕を罵り、突き放した。
彼女は今も昔も特別な存在だ。

It was R2-D2, a delicate recreation of the lovable astromech droid, the head of which revolved, making little pinging sounds. Now I’m taking a photo of my five year-old daughter with her arm around the real thing. Later, she’s kneeling by new droid on the block BB-8, as the brilliant team who operate him activate his remote and puppeteer him from around a corner. She is completely beguiled, patting his domed head and talking to him as he nods and wobbles like a puppy. Knowing the next stop is M Stage and the Millennium Falcon interior, I encourage her to let BB-8 go back to work, to which she says, “Just one more hug, dad.” In this moment I know this new addition to the Star Wars universe is going to be a phenomenon just as Artoo was 37 years earlier, inspiring me to make him my first purchase and the best 99p I ever spent.

Now I’m strolling around the Resistance base at Pinewood Studios, arm in arm with Carrie Fisher, a woman whose image I used to kiss before bed, talking about how strange it must be being back in the universe. She shrugs it off, but I know she’s playing it down because she’s tough and cool and funny as fuck. I give her a hug and unabashedly tell her that I love her. She grabs my hand, regarding my wedding ring and shoves me off with a profanity. She is as special to me now as she was then. I smile a lot that day. Almost as much as I do the following day as she and I discuss Star Wars-related porn in the make-up trailer.

原文 Source Empire Magazine
おまけ